漢方薬の理論

中医治療理論の基礎

正気を扶助するが、邪気を助けない。邪気を取り除くが、正気を傷つけない。支援はするが、邪魔はしない。

中医治療(漢方治療)の基礎理論は数千年の歴史があるが、エビデンスを欠いたもので信用性が低いと思っている人もいるでしょう。しかし、昔から行なわれた漢方薬の臨床試験の歴史を無視してはいけません。昔は試験設備や機械などもなく、人だけが試験の対象でした。そのため、現代医学の基準で漢方薬を評価する以外に、漢方薬が長い間培ってきた治験の経験を無視することは出来ないでしょう。

中医学(漢方医学)は、免疫不全疾患の発症を人間の体内の正気と邪気が戦っていると考えています。身体が正気に満ち溢れているとき、病気に抵抗できる力があるため、病気の発生を抑えることが出来ます。反対に邪気が勝っているときは病気が発症したり、ひどくなったりしやすくなるのです。したがって、治療において重要なところは正気と邪気の比率を調整し、正気を補いつつ、邪気を抑えることです。正気を扶助し、邪気を除去します。正気が増してくると、体調が回復に向かうことを意味します。西洋薬を服用すると同時に漢方薬を服用して、いかに相乗効果を生み出すかは中西結合医療の重要な課題です。

臨床では、現代の漢方薬は免疫不全疾患を治療する際、正気を助け、邪気を取り除くとの基礎理論の基にしており、正気と邪気の盛衰を観察するだけでなく、他の薬物の服用状況を把握し、漢方薬をサポート的に用いることです。

一、扶正

正、すなわち正気であり、人の病気に対する抵抗力や健康を維持する力です。体内が正常に働いているかを測るバロメーターでもあります。現代医学の立場から見ると、人体の病気への抵抗力と自然治癒力及び体内環境の適応能力を指します。
   
西洋医学理論において、漢方の扶助作用は次の3つです。

1.免疫調節機能を強化する (Immunomodulation)
2.生理調節機能を強化する (Physiological Function Modulation)
3.化学治療や放射線治療の副作用を減軽する (Reduction of Side Effects)

二、袪邪

邪とは邪気、細菌、病毒、物理、化学など病気を引き起こす原因となるすべての要素のことです。袪邪:さまざまな治療手段(漢方薬、鍼灸、マッサージ、気功)で邪気を取り除き、病気の原因となる要素を除去することによって病気が徐々に治っていきます。

西洋医学の理論において、漢方の袪邪作用は次の8つです。

1.がん抑制遺伝子を起こす (Epigenetic Modification)
2.良性腫瘍に分化誘導する (Differentiation Induction)
3.がん細胞のアポトーシスを誘導する (Apoptosis Induction)
4.細胞周期調節によって、がん細胞の増殖を抑制し、アポトーシスを誘導する。
   (Cell Cycle Regulation)
5.がん細胞の信号通路を阻害する(蛋白質の活性を抑制する)シスを誘導する。
  (Signal transduction Inhibition)
6.がん細胞の転移や侵入を抑制する(Anti Invasion and Metastasis)
7.血管新生を抑制する (Anti Angiogenesis)
8.がん幹細胞を除去することによって、再発を防ぐシスを誘導する。
  (Elimination of Cancer Stem-like Cells)

三、助戦

標準治療である化学療法や放射線治療の効果を上げると同時に、薬剤耐性が生じる可能性を下げるのは、免疫不全疾患の治療にとって常に重要な課題でした。補助治療としての漢方薬が、いかにエビデンスを集め、中西医が結合しいわゆる統合医療「良いものを残し、余計なものを取り除く」の治療効率を高めることは、治療研究者や従事者が担うべき責務です。

西洋医学理論において、漢方の扶助作用は次の通りです。

がん細胞の薬剤耐性を減軽し (Reduction of Drug Resistance)、化学治療や放射線治療の反応が敏感になる効果を増加する (sensitization of chemo and radiation therapy)